第八話 派遣社員とウジムシ

フリーターに戻った私は割りの良い仕事はないかとハローワークに行きましたが
一度正社員をやめてしまい
「しばらく働きたくないな」という思いで一か月ほど過ごした後
やっぱりこれではいけないと職探しをすることにしました。

とりあえずアルバイトでもするかと高校生の時にやっていた引っ越し屋のアルバイトを再開する事にしました。
しかし、20歳を超えている私に、みんなは高校生の時のような優しさはなく
リーゼントやパンチパーマからは怒鳴られたり、蹴られたりしました。

「こんなタンスももてないのか!」と因縁をつけられて

「みんなの前で100回謝れ!」等と理不尽な事を言われたりして
みんなが段ボールなどを運び出しているその横
荷台の前で100回謝らされたのです。
しかも、大きな声で叫ぶように。

私はその日が終わると「二度とここには戻らない」と思い、また就職先を探すことにしました。

派遣社員

どうせ上京前のつなぎの仕事だし、と言う事で
正社員は別になる必要はないと考え
派遣社員の会社に登録して、汚物処理の工場に派遣されました。

その工場は牛乳やジュースなどの賞味期限切れのものや不良在庫を処理する工場で
パックをつぶしてリサイクルできるパックと中身の液体とを分ける
そして、その液体の部分は別の場所へ運び
パック(紙の部分)はベルトコンベアにのせて、汚れを洗い流す機械の中へ入れる・・・
そんな作業場でした。

私は、牛乳やジュースを粉砕機のようなものへ入れるパートに配属されて
4、5人の派遣社員(中高年ばかり)と一緒にせっせと牛乳パックをかごに入れていました。

牛乳パックには巨大なウジムシうじゃうじゃついていて
聞くところによると関西の方のウジムシは大きいらしく
車にひかれて死んでいる猫にわいている小さなものよりも2~3倍くらいの大きさがありました。

私は仕事だと割り切り、一日8時間
朝8時に出勤して17時までこの単純な作業を2年ほど続けました。

美しい青空

そんな派遣社員を続けて、いても一向にお金はたまりません
月収で17万円ほどだったと記憶していますが
飲み食いしているとすぐになくなるし、洋服なども買っているとすぐにお金が無くなります。

自己顕示欲は強かった私は、雑誌を見ては人気のスニーカーや洋服を買っていたのです。
また、見栄を張って、250万円くらいのアリストという中古車を買ってしまい
毎月の車のローンで6万円ほど払っていました。
それにのって休日はあちこちであるくものですから、お金がいくらあっても足りません。

今思うととても馬鹿らしいです。

お金の教養が全くない私のマインドセットは、
穴の開いた風呂釜に水を灌ぐようなもので
お金が貯まりません。
むしろ、いつもお金に困っていたのです。

そんな消費者マインドと従業員マインドMAXの私でしたが
ある日、派遣の仕事が嫌になりました。
というのも、仕事から帰っても独特の悪臭がついて回ります。
「酸っぱい腐臭」と言えばなんとなく想像がつくでしょうか。
そんな日々が続き鬱気味になりかけていたころ

朝の出勤時間に車のカギがないという小さな事件が起こります。
思い当たるところをすべて探してもカギはありません。
すごく焦りました。

しかし、出勤時間が過ぎるとなぜかとても楽な気持ちになったんです。
とうとう私は、その日、派遣の仕事をバックレました。
遅刻の連絡もしませんでした。

派遣会社からは電話がありましたが
すべてシカト(当時はカラーの電話が普及し始めたころ)

実家暮らしだった私は、家族(母親)を心配させてはいけないと「遅刻の連絡をしたから、電車でいくわ」と嘘をつき
出勤のふりをして家を出ました。

「あ~やっちまったな~」
私は近所をプラプラと散歩しました。

この時はとても天気が良く
雲がぽつぽつとあるかなり美しい青空でした。

私はこの青空を今でも鮮明に思い出すことができます。

でも、1時間もすると「大変なことをしてしまった・・・」
「あのおじさんたちの仕事量が増える、かなり迷惑だな」
と責任を感じるも
もう二度と戻らないからいいか、という開き直った無責任な私とがいました。

>>第九話に続く

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