第四話 16歳と時給950円

高校一年の冬休みアルバイトの楽しみを知った私

冬休みも終わり、すし屋のアルバイトは店が忙しい年末と年始だけだったので
もっと時給の高いアルバイトはないかと探しました。

高校生でも簡単に雇ってくれて時給が高いアルバイト
これはもう肉体労働しかありません。
私はアルバイト情報誌をコンビニで買いました。

「すごい!いろいろなアルバイトがある!」
16歳の私にはかなり新鮮でした。
当時の子どもの私は世の中のことをまるっきり知らないんですね。

私は引っ越し屋のアルバイトを始めました。
時給は950円。
高校生ができるアルバイトの中では破格の時給でした。

引っ越し屋さんは基本的にいつでも小走りが強制されています。
佐川急便なんかもそうですね。
そして、田舎の引っ越し屋さんです。
パンチパーマの人や地元の何とも言えない不良の人
金髪でピアスだらけの人
オールバックのリーゼント・・・
そんな人がたくさんいました。
きっと容姿学歴問わずの力仕事だったので、この手の仕事しかないんでしょう。

仕事内容としては
エレベーターのない5階建てのアパートの5階などはかなりきつかったですが

一番楽なのが移動です。
引っ越し屋なので、車での移動に3時間とか結構あったりします。
移動時間中も時給が発生するので、かなりいいです。
往復で6時間、作業時間で3時間で9時間分の時給がもらえるんです。
かなりいいアルバイトだったと思います。

逆に、引っ越し先が隣町なんてときは「今日は、はずれかぁ」と思ったものです。

私は、高校生だったので、なんとなくかわいがられて
重たすぎるタンスや大型冷蔵庫などは任せられずに、段ボールだけを任せられました。

目立つ行為は避けて大人しくして
何か言われたときには元気に、ハイ、ハイ、と返事をしていたので、礼儀の正しい高校生と思われていたようです。

人間関係をよく見ると、
オールバックのリーゼントの人がリーダー
身長は低めですが、プロレスラーのようにごついです
この人は声も大きく、堂々としており、朝から元気いっぱいです。

その下にスネ夫のようなパンチパーマがオールバックのご機嫌をとっています
その下にプロレスラーのようにがっちりしているけど
気の弱そうなメガネのハゲのおじさんがいて、その人がかなりいじめられていました。
ハゲと言っても全部剃っているわけではなくて
禿げ散らかしているという頭です。
その人が、みんなの前で蹴られたり、怒鳴られたりしているのです。
特にオールバックからはかなり怒鳴られたり蹴られたりしていました。

みんなで食事をしているときも
「コイツは仕事ができない!」
「おまえは、いつも仕事が遅いんだよ!」
と仕事を理由に馬鹿にされています。
仕事状の理由は建前で、全員でただ馬鹿にして遊んでいるだけなのです。

聞くと全員正社員の様でした。
16歳ながら、この職場はきっと底辺なんだろうな・・・・
絶対にこんなところに就職して働きたくないと思ったものです。

もちろん中には優しい人もいて、その人は茶髪のおじさんもいました。
無理な事は押し付けずに、ジュースを奢ってくれたりしてくれましたね。
オールバックのリーダーは大声で怒鳴り散らしてアルバイトを急がせまくるのに
茶髪のおじさんは比較的のんびりです。
慌てるな~大事にもて~、ぶつけるな~と言う感じです。

大人でも色々な人がいるんですね。

このアルバイトは高校3年間、土日や夏休み、冬休みと続けました。
自分の好きな時、前日に電話すればすぐにシフトに入れてくれるので
好きな時に働けるからです。

暴力的な彼らからは世の中の厳しさというか理不尽さを学びました。
大人になったからと言ってみんなが好きな職場につけるわけではない事
大人はみんなが成長していい人になるわけではないという事です。

職場は人間関係や環境が結構大事で
頭を使わずに安易に肉体労働をすると歳をとると取り返しのつかない事になると思いました。
あのいじめられているオジサンはきっとほかに仕事がないんだろうなぁと思ったのです。
自分に重なるようで心が痛かったのです。

みんなが好きな職業を選択できるわけではない・・・
そして、大人になると簡単に仕事をやめたりできないんだな、と思いました。

不登校

高校1年の末になると
クラスには2、3人不登校の人が出てきました。

そのまま高校二年になりました。
「あいつらは留年するんだろうね」という雰囲気でしたが
誰も留年しないのです。

担任の計らいで、留年を避けていたのか、知らない所で通学していたのかはわかりません。

あんまりいかなくても卒業できるのか・・・?と私は思い
学校に行かずに家でゲームをするようになりました。
週に2、3回学校に行くといった感じです。
登校しても、相変わらず基本的にボッチで
一言も誰とも話さずに朝から終わりまでいるなんてことはしょっちゅうです。

そんな孤独すぎる学校生活に嫌気がさし
私は、アルバイトに精を出すようになりました。
アルバイトだと、時給と言うものが発生するので
意味もなく学校にいるより、生きる意味と言うか、そういう楽しみを見出していたんです。

一度、あまり学校に行かなくなるとそれが癖になり
学校に行くことが特別なような状態になり
家にいる事が普通になりました。
昼は家でテレビを見たりゲームをしたりして
夜の7時ごろからは飲食店(レストランの皿洗いや仕込み)のアルバイトをして
10時半くらいに帰宅
そしてゲームをして夜の12時くらいに寝るという事が当たり前になりました。

また、朝早く起きるのと毎朝1時間もかかる通学に嫌気がさし
通学途中で学校に行くのが嫌になり
公園で寝て、5時頃家に帰って学校に行くふりをしてました。
平日のアルバイトに加え土日は引っ越し屋のアルバイトをしていました。

週に2、3回学校に顔を出せばギリギリで卒業できるから
2、3日は我慢しよう・・・

このスタイルであと二年しのげば卒業できるな・・・

そのころにはアルバイト代も貯まって上京できるだろう・・・
その時にはこんな田舎とはおさらばだ!
そう楽観的に考えていました。

現実はそんなに甘くありませんでした

>>第五話へ

公式LINEのご案内

© 2024 松田悠玄の引き寄せの法則